法案詳細レポート

金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案

暗号資産規制の金商法移管を柱とする改正の全記録 — 金融審議会での検討から国会審議・成立・公布まで

第221回国会・閣法(令和8年法律第64号) 2026/07/24 作成 出典: Inkdropノート + 金融庁・国会公表資料
国会提出
2026/4/10
第221回国会に閣法として提出
成立(参院本会議)
2026/7/15
投票総数242・賛成211・反対31
公布
2026/7/23
令和8年法律第64号(官報掲載)
審議会での検討
WG 全6回
暗号資産制度WG報告は2025/12/10公表

🎯この法律は何を変えるのか(4本の柱)

金融・資本市場の変化に対応し、成長資金供給の拡大と市場の公正性・透明性・投資者保護の確保を図る改正。中心は暗号資産規制の資金決済法から金商法への移管で、これに開示・資金供給・不公正取引の3分野の見直しが組み合わされている。

1暗号資産に係る規制の見直し

  • 暗号資産取引の規制を資金決済法から金商法に移管(有価証券とは別の金融商品と位置付け)
  • 発行者・取引業者への情報公表義務(虚偽記載には刑事罰・課徴金)
  • インサイダー取引規制・ステルスマーケティング規制の導入
  • 無登録業者への罰則引き上げ、犯則調査権限の対象化、裁判所への緊急差止命令、無登録売付けの原則無効化
  • コールドウォレット管理分への責任準備金の積立義務(水準は下位法令)

2サステナビリティ情報の開示・保証

  • 一定のプライム市場上場企業に、サステナ開示基準(SSBJ基準)に基づく情報開示と第三者保証を義務付け
  • 保証の提供業者に登録制・業規制を導入(監査法人以外でも可)
  • 時価総額の大きな企業から段階適用(金融審議会サステナWG報告に基づく)

3スタートアップ企業への資金供給の促進

  • 有価証券届出書の提出免除基準を引き上げ(1億円未満 → 5億円未満)
  • プロ投資家向け資金調達に係る勧誘対象範囲の拡大

4不公正取引規制等の見直し

  • インサイダー取引規制の対象者の範囲拡大
  • 課徴金制度の見直し
  • 証券取引等監視委員会の調査権限等の拡充
金融庁による法律案の概要資料
金融庁「法律案の概要」(PDF)のスクリーンショット

🔥国会審議の主な争点

  • 「お墨付き」論争:分離課税化・ETF解禁検討は事実上の投資推奨ではないかとの批判(共産・社民)に対し、片山金融担当大臣は「投資を推奨したりお墨付きを与えるものではない」と答弁を繰り返した。参院の附帯決議第1項にも「お墨付きを与える意図ではないことの周知」が明記された。
  • 暗号資産ETF:片山大臣が「日本でも適切な取引環境を整備すべく解禁する方向で検討したい」と国会で明言。
  • 申告分離課税の範囲:20.315%の申告分離課税は令和8年度税制改正(大綱2025/12/26閣議決定 → 所得税法等改正法2026/3/31成立・公布)で法定済み。ただし対象は「登録業者の取り扱う暗号資産(特定暗号資産)を当該業者に譲渡した場合」に限定され、適用は改正金商法の施行が前提。DEX・無登録業者経由は総合課税のまま。
  • ミームコイン・DEXの規制の限界:海外DEX経由の被害への規制は「対象特定が困難でグローバルにも手法未確立、継続検討」。SNS発信の勧誘該当性は「実態に即して実質判断」しガイドラインで明確化へ。
  • 「サナエトークン」問題:無登録業者による事前販売の資金決済法違反該当性を巡り参院審議が一時紛糾(速記中断)。損失に言及した相談は7/8時点で7件。
  • 流出時の備え:ホットウォレット分は同種同量保持義務を維持、コールドウォレット分にも責任準備金を新設。証券の投資者保護基金のような業界基金は「モラルハザードの懸念があり現時点では適当でない」。
採決結果: 衆議院(2026/6/11)・参議院(2026/7/15)とも賛成多数で可決。反対討論は日本共産党のみ(「投機でありギャンブル性のあるものを投資対象として扱うのは不適切」等)。両院で附帯決議が付され、参院では与野党9会派共同提案・全会一致だった。

🧭ここまでの流れ(要約)

① 金融庁が2025年4月にディスカッション・ペーパーを公表 → ② 2025年6月の大臣諮問を受け金融審議会に「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」を設置、7月から6回審議 → ③ 2025年12月10日にWG報告公表 → ④ 報告を踏まえた改正法案を2026年4月10日に国会提出 → ⑤ 衆参の委員会質疑を経て7月15日成立、7月23日公布。

サステナビリティ開示・保証の部分は、別途「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG」(2024年3月設置、計11回)の中間論点整理(2025/7/17)と最終報告(2026/1/8公表)に基づく。

🕐時系列(検討開始〜公布)

金融審議会・金融庁 国会審議 法令

🏛金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」

2025年6月の金融担当大臣諮問「暗号資産を巡る制度のあり方について検討を行うこと」を受けて設置。座長は森下哲朗・上智大学法学部教授。全6回の審議を経て2025年12月10日に報告を公表した。

暗号資産制度WGの開催一覧ページ
金融庁・暗号資産制度WG開催一覧(ページ

📄法案関係資料(金融庁・第221回国会)

提出日は令和8年(2026年)4月10日。金融庁の国会提出法案ページに一式が掲載されている。

金融庁 第221回国会法案ページ
金融庁「第221回国会における金融庁関連法律案」ページ

🗳国会審議(衆議院 → 参議院)

🔗関連リンク集

参議院議案情報
参議院 議案情報
参議院本会議投票結果
参議院 本会議投票結果
WG報告公表ページ
暗号資産制度WG報告 公表ページ
官報
官報(2026/7/23)
⚠ 国会審議の発言はInkdropノート(委員会中継の書き起こし・要約)、金融審議会WGの発言は金融庁公表議事録の機械要約に基づく。いずれも要旨であり、正確な引用は公式議事録での確認を推奨。

👥発言者一覧

🎙2026/7/14 参議院・財政金融委員会(質疑・採決)

改正案の質疑・採決。賛成多数で原案通り可決(共産が反対討論)。その後、与野党9会派共同提案の附帯決議を全会一致で可決した。

🎙2026/6/10 衆議院・財務金融委員会(質疑・採決)

暗号資産規制の金商法移管を中心に質疑。採決の際、暗号資産関連の事項を多数含む附帯決議が付された。中継動画あり。

🏛金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(2025/7〜11・全6回)

法案の基礎となったWG審議の発言録。各回の議事録(金融庁公表)から発言者と発言要旨を採録した。資料・議事録原文へのリンクは「会議と資料」タブを参照。

📜附帯決議(参議院・財政金融委員会)

与野党9会派(自民、立憲、国民、公明、維新、参政、共産、れいわ、社民)共同提案、全会一致で可決。主な項目は次のとおり(ノート記載の要旨)。

  • 投資者保護強化・分離課税化が「国としてお墨付きを与える意図ではない」ことの周知と、規制・課税の及ばない取引が残ることの理解促進・金融リテラシー向上
  • 裏付け資産がない商品特性を踏まえた適合性原則の実効性確保(自主規制機関と連携したガイドライン整備)
  • 金融庁・警察庁の連携強化、証券取引等監視委員会の犯則調査対象拡大と緊急差止命令申立ての体制整備
  • 監視委員会の高度化システム投資等による体制強化、暗号資産取引での業界との連携強化
  • 課徴金制度の機動的執行と、実効的な抑止に向けた制度全般の継続検討
  • 附則第92条の検討は施行後5年を待たず、施行状況を勘案して必要に応じ制度を見直し

Appendix

📎補足

本レポートの情報源と限界

・一次情報源: Inkdropノート「2027/06 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」(委員会審議の書き起こし・要約・リンク集)。

・補完情報源: 金融庁(法案資料・暗号資産制度WG各回資料・WG報告)、参議院議案情報・本会議投票結果、衆議院議案審議経過、官報。

・委員会発言はノート内の自動文字起こしと要約に依拠しており、発言者名の一部(〔?〕付き)や細部の言い回しは公式会議録と異なる可能性がある。

・スクリーンショットは2026/7/24時点の各公式サイトの表示。

用語ミニ解説

金商法移管: 暗号資産を決済手段(資金決済法)ではなく金融商品(金融商品取引法)として規制する枠組み変更。有価証券とは別カテゴリの金融商品と位置付ける。

申告分離課税: 給与などと合算する総合課税(最大55%)ではなく、株式等と同じ20.315%で分離して課税する方式。

DEX: 分散型取引所。中央集権的な管理者がおらず、現行・改正後とも直接の規制対象にできていない。

適合性原則: 顧客の知識・経験・財産の状況に照らして不適当な勧誘をしてはならないという行為規制。

SSBJ基準: サステナビリティ基準委員会が策定する日本のサステナ開示基準。

よくある疑問(FAQ)

Q. いつから施行される? — 公布は2026/7/23。施行期日はノート・本レポート収集資料の範囲では未確認(附則で段階施行が通例)。分離課税は改正金商法の施行が前提。

Q. すべての暗号資産取引が20%課税になる? — ならない。登録業者の取扱暗号資産(特定暗号資産)を当該業者に譲渡した場合に限られ、DEXや無登録業者経由は総合課税のまま。根拠法は令和8年度税制改正の所得税法等改正法(2026/3/31成立・公布)で、適用開始は改正金商法の施行が前提。損失は3年間の繰越控除が可能だが上場株式等との損益通算は不可。

Q. 暗号資産ETFは解禁された? — 未解禁。大臣が「解禁する方向で検討したい」と答弁した段階。

Q. NFTや地域通貨も対象? — 暗号資産の定義は変更されないため、NFTなど資金決済法上も暗号資産に該当しないトークンや、前払式支払手段型の地域通貨は対象外。

Q. 衆議院の議員別の賛否は見られる? — 原則見られない。衆議院は起立採決・異議なし採決が基本で、議員別の賛否が記録されるのは記名投票のときのみ(本会議会議録に掲載)。政党(会派)別の賛否はスマートニュース メディア研究所の国会議案データベースで確認できる。参議院は押しボタン式のため議員別の投票結果ページが公式に公開されている。