令和7年資金決済法改正(令和7年法律第66号)で創設された仲介業制度の全記録 — 金融審議会での検討から国会審議・政令整備・自主規制まで
従来、暗号資産・電子決済手段(ステーブルコイン)の売買・交換の「媒介」を業として行うだけでも、暗号資産交換業者等と同じ登録・規制が必要だった。ゲーム会社が自社アプリで交換業者を紹介するようなケースでも「媒介」に該当し得ることが、Web3事業参入の壁とされてきた。
令和7年改正は、交換業者等と利用者の間で取引の媒介のみを行う者向けに「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」を創設し(改正資金決済法 第3章の4等)、過不足のない軽い規制を適用する。証券の金融商品仲介業に近い建付けである。
内閣総理大臣の登録を受けて営む。登録申請書の記載事項・添付書類は内閣府令(2026/5/22公布)で規定。
特定の暗号資産交換業者等への「所属」が必要。所属先が仲介業者を指導・監督する義務を負い、仲介業者が利用者に与えた損害は所属先が原則として賠償責任を負う。
交換業(資本金1,000万円以上等)と異なり財務要件を課さない。所属制による利用者保護が前提。
利用者からの金銭・暗号資産等の預託は禁止。顧客資産を持たないからこそ軽い規制が成立する。
犯罪収益移転防止法上の取引時確認等の義務は課さない。取引当事者となる所属先の交換業者等が履行するため。
適合性原則、不招請勧誘の禁止(訪問・電話による勧誘要請のない接触の禁止)、手数料等の情報提供義務、説明義務・広告規制を適用。
| 暗号資産交換業者等 | 仲介業者(新設) | |
|---|---|---|
| 参入 | 登録制+財務要件(資本金1,000万円以上等) | 登録制のみ(財務要件なし) |
| 顧客資産の預託 | 可(分別管理等の義務) | 禁止 |
| 犯収法(マネロン等対策) | 取引時確認・疑わしい取引の届出義務 | 義務なし(所属先が履行) |
| 損害賠償 | 自ら責任 | 所属先の交換業者等が原則責任 |
| 勧誘・広告規制 | 適用 | 適用(適合性原則・不招請勧誘禁止等) |
① 2024年8月26日の金融審議会総会で金融担当大臣が「送金・決済・与信サービスの利用者・利用形態の広がり等を踏まえた適切な規制のあり方」を諮問 → ② 「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(座長: 森下哲朗・上智大教授)が2024年9月から全7回審議 → ③ 2025年1月22日にWG報告公表(媒介のみを行う新たな仲介業の創設を提言)→ ④ 2025年3月7日に法案提出、衆院修正を経て6月6日成立・6月13日公布 → ⑤ 政令・内閣府令案のパブコメ(2025/12/16〜)→ 2026年5月22日公布 → ⑥ 2026年6月1日施行。JVCEAも仲介行為の自主規制規則2本を2026年6月に施行。
なお同改正は仲介業のほか、暗号資産交換業者等への資産の国内保有命令(FTX破綻の教訓)、信託型ステーブルコインの裏付け資産運用の柔軟化(国債等50%まで)、クロスボーダー収納代行への資金移動業規制の適用、資金移動業者破綻時の直接返還の導入も含む。
2024年8月26日の金融審議会総会での大臣諮問を受けて設置。座長は森下哲朗・上智大学法学部教授、委員13名(伊藤亜紀・井上聡・岩下直行・小川恵子・長内智・加藤貴仁・神作裕之・河野康子・坂勇一郎・杉浦宣彦・永沢裕美子・堀天子・松元暢子)とオブザーバー(全銀協・JVCEA・JCBA・Fintech協会・新経済連盟・警察庁・日銀ほか)で構成。2024年9月〜12月に全7回審議し、2025年1月22日に報告を公表した。仲介業は第5回(2024/11/21)で集中討議され、第4回は暗号資産の位置づけ(国内保有命令)、第6回は制度カテゴリーの説明が行われた。
提出は令和7年(2025年)3月7日(閣法第39号)。衆議院修正を経て6月6日成立、6月13日公布(令和7年法律第66号)。
仲介業者の登録申請書の記載事項・添付書類、利用者への明示・説明・情報提供事項、銀行・保険会社が仲介業として行える業務範囲などの下位法令案が意見募集にかけられ、62の個人・団体から259件のコメントが寄せられた。政令等は2026年5月22日に公布、6月1日施行。
法施行に合わせ、JVCEAは仲介行為に関する自主規制規則・ガイドライン2本を2026年6月に施行した。定款・規則の制定改正はパブリックコメント(意見公募手続)を経ている(一覧のNo.021「定款・規則の制定及び改正」が仲介業対応を含むとみられる)。
仲介業の利用者保護の仕組みを中心に質疑。採決では検討条項の見直し目途を「5年」から「3年」に短縮する修正を議決した。
所属制の監督実効性と規制緩和への懸念を中心に質疑。翌6/6の本会議で可決・成立した。
仲介業は第5回(2024/11/21)で集中討議され、全13名の委員のうち12名とオブザーバー3団体が発言した。所属制の是非(賛成/疑問)が最大の論点。第4回は暗号資産の位置づけ、第6回は事務局による制度カテゴリーの説明。議事録原文は「会議と資料」タブの各回リンクから確認できる。
発言・資料・時系列を横断検索する。ヒットした発言者の一覧と、関連する資料(スクリーンショット・リンク)をまとめて表示する。
Appendix
・一次情報源: 金融庁(WG資料・報告、法案資料、パブコメ実施・結果)、参議院(議案情報・投票結果・調査室資料「立法と調査」No.475)、衆議院(議案本文・制定法律)、JVCEA(自主規制規則・パブコメ)。
・国会発言は国会会議録検索システムAPIの検索結果の機械要約であり、網羅的ではない(仲介業に言及した主な発言のみ)。
・JVCEAパブコメNo.021が仲介業規則を含むかは一覧ページからは確定できなかった(「含むとみられる」と記載)。
・スクリーンショットは2026/7/28時点の各公式サイトの表示。
媒介: 他人の間に立って取引成立に尽力する行為。売買の当事者にはならない。紹介の態様によっては媒介に該当し得る。
所属制: 仲介業者に特定の金融機関への所属を求め、所属先に指導・監督義務と原則的な損害賠償責任を負わせる仕組み。証券の金融商品仲介業等で採用例がある。
電子決済手段: 法定通貨と連動した価格で発行され額面償還を約するもの等(いわゆるステーブルコイン)。令和4年改正で制度化。
犯収法: 犯罪による収益の移転防止に関する法律。取引時確認(本人確認)や疑わしい取引の届出を義務付ける。
不招請勧誘の禁止: 勧誘の要請をしていない利用者への訪問・電話による勧誘を禁止する行為規制。
Q. 仲介業者は顧客の金銭や暗号資産を預かれる? — 預かれない。利用者からの金銭等の預託は禁止されており、預からないことが軽い規制の前提になっている。
Q. 仲介業者は本人確認(KYC)をする必要がある? — 犯収法上の取引時確認等の義務は課されない。取引当事者となる所属先の暗号資産交換業者等が義務を履行する。
Q. いつから登録申請できる? — 制度施行は2026年6月1日。登録申請書の記載事項・添付書類は2026年5月22日公布の内閣府令で定められている。
Q. 令和8年の金商法移管でこの制度はどうなる? — 令和8年改正(金商法・資金決済法改正、2026/7/23公布)で暗号資産取引の規制は金商法へ移管される。仲介業制度の扱いは移管後の下位法令整備の中で整理されるため、最新の金融庁公表資料の確認が必要(詳細は別レポート「金商法・資金決済法改正法案」参照)。