書籍感想 『「紫の牛」を売れ!』 by セス・ゴーディン

「紫の牛」を売れ!
「紫の牛」を売れ!

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セス・ゴーディン
ダイヤモンド社
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「紫の牛を売れ!」という書籍名から中身を推測するのは難しい。さらに原題は、「Puple Cow」である。和名は、まだ推測の余地があるが原題のほうはお手上げである。しかし、一度読んでしまえば、書籍名にも納得できるところがある。

本書は、簡単に言うとマーケティングについて書かれた本である。マーケティングを考えるときに、よく3Pや5Pが出てくる。これは、マーケティングにとって重要とされる項目をProduct・Price・Promotionのように頭文字にPがつく単語で表現したものである。

「常識破りな」という意味の単語「remarkable」が「P」から始まっていれば、紫の牛「Purple Cow」を持ち出す必要は無かったと著者は言っているが、ちょっと疑わしい。本書内に登場する「紫の牛」を「常識破りな」に置き換えると意味は通じるがピンとこない。

従来は、できあがった製品をいかに世の中に認知させ、いかにして売るか。その為の手段としてマスメディアを使って広告に莫大な予算を割くことが行われていた。

筆者は、消費者が必要とするものが全てそろっている今の世の中では、従来の方法は限界がきている。これからは、出来上がった製品をいかにして売るかという発想ではなく、いかに紫の牛を作り出すかを考えなければならないと言っている。

他の製品と比較して、常識破りな点がある製品「紫の牛」を作る。それも単に常識破りであるだけでなく、新しい製品を使って現状の問題点を解決したいと思っている人々に興味をもってもらえるものでなければならないとしている。

紫の牛を作り出すときに必要なものとして提示されているものをいくつか抜粋する。

  • 自分と自分の仕事は別物である。仕事への批判は自分への批判ではないと割り切る。
    日本社会では、案外これは難しい。とくにできの悪い人間なんかは、仕事のミスを起こる時に、「だからお前はだめなんだ」と人格否定をしたがる。一部のマネージメント層では怒鳴ることが偉いことだと錯覚している時代錯誤な人もいるので厳しい。でも、割り切ってしまう。割り切る勇気を持つことが大切。
  • 突出した点を狙う
    単純に何かを突出させれば良いという話ではなく、すべての「P」を見直し、どれを突出させればいいのかを考え無ければいけない。考えずにやると成功どころか破滅である。(例:温泉であらゆるサービスを無料にする。。。
  • スニーザーは徹底的に利用せよ
  • オタクを狙え
    スニーザーはまきちらすのが好きだ。スニーザーは、紫の牛を作り出すことに実績のあるマーケターの話を快く聞こうとする。彼らを大事にすれば耳を傾けてくれるのだから、それをうまく利用する。
    これを実にうまく利用しているのがマイクロソフトである。Windows Vistaを販売すると、頼んだり報酬を用意しなくても、あらゆる人がVistaのダメな点を指摘し続けた。あらゆる人がVistaを話題にしたのだから、Vistaの認知度はかなり高い。そして、ダメな点を徹底的にいろんな人が指摘してくれた。次のWindowsの改良点をマイクロソフトが頭をひねって創造しなくても、それらのダメな点を盛り込めば自動的に市場が求める素晴らしいものになる。
    そして、Windwos 7のβがリリースされた。これもマイクロソフトが報酬を用意しなくても、新しいものずきがこぞって利用し意見をのべている。大半の意見として、VistaはだめだったけどWindows 7は素晴らしいというものだ。これは、マイクロソフトにしてみればニヤリとしたくなる状況だ。
    そしてスニーザー育成としてマイクロソフトMVPという仕組みまで作ってフルにスニーザーを活用していると言える。
    マイクロソフトだけをとりあげたが、GoogleもAppleも同様にうまく活用していると言える節が多々ある。

他にも、「紫の牛」を作り出すためのヒントとなることが取り上げられているので気になる方は本書を手にしていただくとして、最後に考察を行って、感想を終えようと思う。

自分は、SIerでSEをやっているのだが、紫の牛を作り出す余地があるのかどうかを考えたい。紫の牛は、企業対消費者の時はとても親和性が高いように思う。企業対企業の場合はどうだろうか。

SIerでSIを行う時に出てくる概念としては、QCDである。(最近は、CS(顧客満足度)も含まれることが多いかな?)品質、コスト、納期の3点が重視される。そして、これらはトレードオフの関係にあり、プロジェクトに応じてどれが重要視されるかによってバランスがとられる。

たとえば、納期と品質を最優先にすると、当然コストは高くなる。納期とコストを重視すると品質に影響が出るといった具合だ。

自分は紫の牛の余地はあると思っている。企業と企業、SIでも口コミはあるからだ。A社のプロジェクトが成功しお客様も大変喜ばれた。そのA社の情報戦略室担当役員が知り合いのB社の社長にうれしくて話す。するとB社から声がかかって、競合他社より不利な状況(見積もりが高いetc)でも、社長の鶴の一声に近いもので数億円のプロジェクトを受注したと言う実例もある。当然、逆のパターンでプロジェクトに失敗して撤退した時には、負の連鎖が起こる。

では、SIにおける紫の牛はなにか。確実なのはCSだろう。常識破りにCSが高いプロジェクトができれば楽なもんだ。でも、それが難しい。QCD、トレードオフという前提で考えると答えはでてきそうにない。(まぁ、そのひとつの解としてパッケージ製品があるんだろうけど。。。

結局、まとまった答えが出てこない。とりあえず出てこない理由を、入社以来の業務が直接顧客に携わらない先行技術調査の部署にいるから顧客視点、プロジェクト視点が薄く養われていないからと言い訳して、今日のところは終わりにしよう・・・・・。